EVが普及すると故障車だらけになる… どういうこと

EVが普及すると故障車だらけになる?

クーリエ・ジャポンから、「EVが普及すると故障車だらけになる」という記事が出ているが、根拠になるデータはあるのだろうか。記事で触れているのは、中国の話のようなので、中国にEV故障車の統計データがあるのかもしれないが、EV故障車の実数や故障率について、記事は一切触れていない。記事で紹介されているのは、中国におけるガソリン車とEVの修理工場数を比較したもの(ガソリン車は39万7000軒、EVは2万軒 [記事による]で、これに、お決まりの “EV先進国” ノルウェーと中国の新規登録車に占めるEVの割合(ノルウェー: 2024年新車販売台数の88.9%がEV、中国: 販売される新車の半分以上がEV [記事]を併せて記事にしたものだ。内容については、原著(※¹)を参照して、各自ご判断いただくとして、この記事からは「故障車だらけになる」必然性とその理由は伝わって来ない。

※¹: “EV先進国”中国が抱える「深刻な問題」 このままでは故障車だらけに…

町工場で直せる故障はEVもエンジン車も同じ

エンジン車およびBEVの故障は次の4群に分けて考えると分かりやすい。第1群はエンジン車特有の故障で、「内燃機関そのもの」や「燃料ポンプの故障」および「制御コンピュータの異常によるミスファイヤ」や「ダイナモの故障」などがこれにあたる。現行のBEVは変速機のないものが殆どなので、「変速機の故障」もエンジン車特有の故障に加えてよいだろう。第2の群には、「ブレーキ系統」や「電気系統(電気配線系統)」、「サスペンション系統」の故障が分類され、エンジン車でもBEVでも遭遇しうるものとなるが、ブレーキ系統については、回生ブレーキを多用するEVでは故障は少ないと見込まれる。実際、EVの回生ブレーキに慣れると、油圧式ブレーキは殆ど使わなくなる。第3群が、「12Vバッテリー上がり」や「パンクなどのタイヤ関連」「車載カメラの故障」などの軽微とも言える故障で、EVでも起こるが、第2群と同様、旧来の自動車整備工場で対応可能だ。第4群の故障が、BEV特有の故障で、「走行用バッテリー」や「制御装置(EVコンピュータ)」や「駆動モータ」の故障が含まれる。これらは専門知識が必要な高圧回路やコンピュータ回路からなるため、既存の自動車修理工場での対応は難しいと思われる。

EV特有の故障はメーカー対応になる

BEVのような先端機器の修理対応がどうなっているかは、エアコンや給湯器や大型ストーブなどの故障について考えてみるとよく分かる。エアコンが故障した場合、近所の電気店で修理して直ると思っている人はいないだろう。同様に、高圧回路と爆発の危険もあるリチウムイオンバッテリーが絡むBEV特有の故障を町中の修理工場で取り扱えるとは考えにくい。鉄道会社の電車修理工場のような大規模な設備が必要で、町中の工場で対応できるBEV特有の故障は、コンピュータの交換までだろう。コンピュータの交換も、テスラの例だが、新車購入と同じくらいの費用がかかるようなので、個人でEV特有の故障を修理して再利用するという選択肢は考えにくい。つまり、故障しないEVを選ぶユーザーの眼が必要で、「故障車だらけ」ではEV市場の成長は望めない。この記事の「故障車だらけになる」という表現が「中国製のEVは失速する」ということと理解するのは穿ち過ぎかもしれないが、数年前まで、中国や米国、韓国で報道されていた発火するEV(※²)のことを考えればどうなのかなと思う。
※² 本邦ではEVシステムに起因する発火事故は報告されていない。

日産リーフの6年間

BEVである日産リーフに新車から6年乗って、遭遇したトラブルは、➊12Vバッテリーの消耗による起動不良(バッテリ交換で解消)と➋アラウンドビューモニタ・リアカメラの故障(保証期間内で無償交換)および ➌左後輪のパンクだった。BEVにも補機バッテリーと呼ばれる12V鉛バッテリーが積まれており、これでEVシステムを起動する訳だが、乗る機会が少なかったり、寒冷地だったり、アクセサリーを使いすぎたりした場合にはこの消耗が早くなり、起動困難となることがある。テスラでは駐車中にも補機バッテリーへ適宜充電する仕組みがあるようだが、リーフでは(少なくともこの時点までは)走行モードでないと充電されない仕様だった。3年目後半にEVシステムの無償アップデートがあり、補機バッテリーの持ちや電費が改善されたようなので、補機バッテリー充電の仕組みが今も同じかどうかは定かではないが、12V補機バッテリーの電圧監視(※³)と予備バッテリーの準備は必要だと考えている。

※³ シガーソケットに装着するタイプの電圧計で監視している。12Vバッテリー電圧を変動する負荷の下で測定している訳で厳密には正しくないが、目安としては問題ないと考えている。12Vバッテリーが充電中の場合は《13~14V》、フル充電の場合は《12.8V 程度》になり、これらから、以下の基準で判断している。

12Vバッテリー健康 : 起動して10分以内に12.8Vまで下がる。
12Vバッテリー注意 : ある程度走行すると12.8Vまで下がる。
12Vバッテリー交換 : ある程度走行しても電圧が下がらない。

判断基準で「12Vバッテリー交換」となった場合には、予備バッテリーを手配のうえ、直接測定した12Vバッテリー電圧で交換が必要か否かを判断する。EVシステム停止(=12Vバッテリー高度消耗)となっても、新品バッテリーなら起動できる。機能が劣る中華製ジャンプスタータは使わない。実際、起動できなかった。

※⁴ (重要な注意)急速充電中に、エアコンを使うため、走行モード(走行はできないが)にしていた場合、そのままだと、充電完了後にシガーソケット電圧が11V台を示す。この詳細は不明だが、一旦走行モードが解除されるようで、できるだけ速やかに走行スイッチを入れ直した方がよいと考えている。

※⁵ 自動車評論家・国沢光宏氏推薦の「鉛バッテリー再生延命装置『のび~太』(エルマシステム)」も使ってみたが、デサルフェーション効果を実感出来ず、バッテリーは3年で(リーフでは)使えなくなった。(2022/7/18 リーフ12Vバッテリーに装着 → 2022/11/7 EVシステム停止 → のび~太撤去で起動)