若者に贈る 年金早わかり その2。日本の年金制度の問題点 ‥ 制度的に不完全な国民年金が低年金層を生む

全く別の2つの年金制度(厚生年金-国民年金)

厚生年金は、明治8年の恩給制度から始まり、公務員の共済年金として発展、これが、終戦直前の昭和17~19年に始まった厚生年金と、平成27年の「被用者年金一元化法」によって統合されたものだ。共済(ともに助け合う)と厚生(民の生活を豊かにする)を柱とした年金制度で、法令名の示すよう被用者(会社員と公務員)を対象とし、国際的にも標準的なものだ。

これに対して、自営業者やフリーターが加入する国民年金(昭和36年)は厚生を目的とするが、共済の要素を元々含まない制度だ。日本経済研究センター田中秀明氏が基礎年金のあるべき姿で指摘しているように、国民年金は、①保険料が逆進的で、②給付額が低く、③保険料免除者も多い (半数が免除)-年金制度としては致命的欠陥のある制度だ。改革については次々項で議論するが、欠陥の主因は「保険料に報酬比例部分を含まないこと」、つまり、原資が少ないことで、このため、問題①②が引き起こされる。③は制度上の納付免除者(厚生年金加入者および同配偶者)で、特に問題と言うわけではないと考える。

自営業者は報酬比例部分の保険料を負担していない

日本の年金制度は、定額部分と報酬比例部分からなる「2層型年金」(企業年金を加えると3層型年金)と一般に解説されるが、これは不十分かつ正しくない。実際は2種類の年金制度が並立する2元的年金制度で、被用者を対象とした厚生年金と非被用者(自営業者やフリーターやパート労働者)の国民年金が複雑に組み合わさったものだ。

厚生年金が…納付・給付ともに報酬比例部分を持ち、所得再分配効果もある…国際的に標準的な年金制度であるのに対し、国民年金は、納付・給付ともに定額で、報酬比例部分も所得再配分効果もない奇妙な年金制度となっている。この2つの年金制度を、「国民年金=基礎年金」と定めて、厚生年金の基礎部分を、会計上、国民年金と一体化させる手法(年金特別会計・基礎年金勘定)が取られているようで。詳しくは次項で説明するが、基礎年金は姑息な財政調整のように思える。

国民年金では、自営業者にそれなりの収入があっても、報酬比例部分の保険料納付義務は一切ない。余裕のある自営業者から報酬比例部分の保険料を徴収して、低所得層を救済するという所得再分配効果が全く期待できない年金制度で、貯えのある中~高所得自営業者には「おまけ」のように映るだろうが、不幸にして現役時代から低所得となったフリーターの国民には老後の一大事となる。

世界の年金制度をみると、例えば、英国では 2016年の大改革以前の旧制度の時代から、国民保険〈National Insurance〉(実質的年金保険)として自営業者からも報酬比例部分を徴収していた。徴収は税金と同時なので、取り漏れや、不公平感はなく、2016年に1層型の定額年金制に移ったのち(=給付面での報酬比例部分がなくなったのち)も、自営業者からの報酬比例部分の保険料徴収は継続されている。

国民年金の保険料徴収は公平に

前項で、厚生年金の基礎部分を国民年金と一体化させる手法(財政調整)が取られていると述べたが、前述の田中氏は「この財政調整が様々な矛盾と不公平をもたらしている」として、「⑴厚生年金に一般会計から10兆円が投入される矛盾」や「⑵貧しい現役世代が豊かな高齢者を支える不公平」、「⑶国民年金保険料を支払わない第2号受給者(厚生年金加入者)、第3号受給者(同配偶者)」を挙げている。意見⑴が妥当でないことは「年金特別会計・厚生年金勘定」を見れば明らかで※¹、⑵の消費税に触れた議論は的外れだ。また、⑶の議論は、実質的に破綻状態にある国民年金の破綻に関する犯人捜しで真犯人を隠すためのものだろう。真犯人は間違いなく「自営業者に報酬比例部分の保険料を納付させていないこと」だから。

田中氏の論説を含め、低給付を正すため、自営業者に報酬比例部分の保険料を負担させようという議論がないのは不思議だ。年金制度が、高齢化から、英国風の定額給付(被用者の報酬比例部分給付をカット)に変わるのは時間の問題だ。その場合、給付額は単純に年金保険料総額を被保険者数で割ったものとなるため、保険方式・税金方式に拘わらず、原資の確保が最重要事項となる。

※¹ 厚生年金に年間10兆円の公費投入があるとの主張:「年金特別会計・厚生年金勘定(令和5年度)」によると、厚生年金勘定の<歳入>は「保険料収入 35兆1702億円, 一般会計より受入 9兆1979億円… 」で、同<歳出>が「保険給付費 23兆9624億円, 基礎年金給付費等基礎年金勘定へ繰入 17兆7524億円… 」となっている。一般会計から受入れた公費に保険金収入の7兆円ばかりを加えた金額が基礎年金勘定に移されていると読めるが、ここは素直に国民年金勘定と表現すべきところだ。

年金制度 破綻 -定額年金 - 正しく理解しよう

「年金制度が破綻する」という意味は、年金がなくなるという意味ではない。そこまで急には進まない。英国が先行している報酬比例部分の給付を放棄した「1層型定額年金」(満額が定額)への移行がまさに破綻だ。英国では2016年から、給付水準を維持するため新しい年金制度が導入されているが、これが日本の年金制度の未来の姿かもしれない。英国には自営業者の年金保険料・報酬比例部分納付があったため、現在の日本の被用者の平均程度の支給が維持されているが、自営業者が保険料を納付していない日本でこれがうまくいくだろうか。年金は年金保険者の財産であり、形式上賦課方式であるからといって他世代から与えられるものではない。負担は公平にして、所得再配分効果を生むため、日本でも自営業者の報酬比例部分の保険料を義務化すべきだ。


基礎年金のあるべき姿 https://www.jcer.or.jp/blog/tanakahideaki20220209.html(公益社団法人 日本経済研究センター)
特別会計の決算に関する情報公開「年金特別会計」編 https://dreamin-sr.com/news/特別会計の決算に関する情報公開「年金特別会計/