浜松でのEV発火事故 ー 安全への歩み

浜松市内でEV火災

2026年4月23日 午前1時15分〜20分頃、浜松市中央区で駐車場に止めていた乗用車から出火し、近くに止めてあった車両3台を焼いて、隣接する住宅が半焼する火事があった。車の所有者の親族は「車のバッテリーを充電中に『ボン』と音がして火が出た」と通報している。報道されている現場写真から、当該車両(EV)は「観音開きのミニバンあるいはSUV」と思われるが、具体的な車種名については公表されていない。

車種名をなぜ公表しないのか

①個人のプライバシー尊重(車種名から個人の特定)、②風評被害を避ける報道姿勢( 事故原因未確定:製造上の欠陥/個人の過失)、③法的未整備( 航空事故「運輸安全委員会による調査」のような義務がない)が、このような報道姿勢を生むのだろうが、乗員がいれば死亡事故にもつながり、周辺住民にも被害を及ぼす可能性のある重大事故(火災)についての報道として正しいだろうか。事故のない車社会事故を起こさない車作り事故を起こさない(運転)操作を目指すのなら、航空機事故のような厳格な対応が必要だろう。車両製造メーカーや車両所有者へ警鐘を鳴らす意味でも、車種名は公表すべきだと思う。EV火災と言うだけで、EV乗りにはすでに風評被害になるのだから。

リチウムイオン電池の安全性

自動車事故と航空機事故の「1件当たりの」死傷者数の違いが、対応の違いを生むという見方は前々からあるが、発火リスクがこれほどまでに周知されている「リチウムイオン電池」であるにも拘らず、粗悪な製品や制御の甘い製品(モバイルバッテリーで考えてみよう)が市場に溢れ続けるのはなぜか。もしこれが特定の車種に特有の欠陥であれば、公表が遅れるほど「今この瞬間も自宅で充電しているユーザー」を危険にさらすことになりかねない。日本では、「5分間の脱出時間」という極めて基本的な安全基準がようやく2027年から義務化されるが、国際基準となるには至っておらず、「安全上の議論が後回しにされている」と言わざるを得ない。

リチウムイオン電池の安全規制

欧州は2035年のガソリン車禁止を掲げて、環境規制を強力に推し進めてきたが、「電池そのものの発火対策」については、具体的な国際基準が未成熟なまま普及を急いだ。補助金や税制優遇でEV販売を「なかば強制」する一方で、一度火がつくと消せないリチウムイオン電池の特性に対する法的・技術的ハードルの整備は追いついていない。これまでも「火であぶって爆発しないか」といった試験(耐火性試験)はあったが、電池内部で起こる「熱暴走(内部短絡)」による火災を想定した詳細な義務付けはできていない。日本には、2007年に策定された世界で初めてEV乗員保護基準があるが、国際的には、今回の「5分間の脱出時間」ルール(日本では2027年から義務化)を国連の場(WP.29)に提案するまで規制は実質的に皆無だったと言える。日本のメーカーや政府が「火災リスク」や「インフラ不足」から、全面EV化につき慎重に訴えてきた姿勢は、EV推進派からは「既得権益を守るための遅れ」と揶揄されてきた。

「5分間の脱出時間」ルール(国内では2027年から)

電気自動車(EV)の「5分間の脱出時間」に関する法規制は、バッテリーの熱暴走による火災から乗員を守るための安全性規制として、日本の国土交通省が自動車の保安基準を改正強化したもので、国内では、2027年から義務化される。国際的にも、国連 WP.29(自動車基準調和世界フォーラム)で議論が行われており、「レーザー照射による電池破壊試験という、厳密で客観的な試験法を日本が提案している。国連でも「EVをどこまで安全にするか」の国際ルール(UN Regulation No. 100)策定が議論されてるが、この中で、中国は、2026年7月から中国国内で施行するGB 38031-2025「発火・爆発を一切許さない」という独自基準を推進している。自主リコールがリコールの半数以下という国で果たして正しく運用されるかどうか疑問もあり、中国大手がすでに開発済みの技術(NP:No Propagation技術)を基準化する狙いが透けて見えている。

航空機型モデルへの移行が望まれる

今回の「5分間ルール」の策定では、国土交通省や自動車メーカーが「日本の試験法を国際標準(UN規則)にする」ため、国連WP.29での活動を積極的に行っている。片や、欧州は「カーボンフットプリント(製造時のCO2排出量)」という別のルールを持ち出し、日本の電池を「環境に悪い」と定義し排除しようとする動きを見せている。技術だけでなく、この「定義の掛け違え」にも勝てるかどうかが、エンドユーザーの安全にかかわる正念場となることは少し悲しく感じるが、JISDINに負けた反省は忘れないでほしい。最後に、航空機型モデルへの移行については、現在、「交通事故分析センター(ITARDA)」などを通じて、自動車事故についても、より詳細なデータ公開と原因究明を制度化しようとしているところと聞いている。また、全固体電池の「燃えにくい」という特性を、単なるカタログスペックではなく、国連の国際基準(UN R100など)の中での「安全評価法」として組み込むようにとの働きかけもある。

※かつて日本には、コンセントのプラグ1つにもJISの刻印があった。これは「電気用品取締法」という厳しい法律に則ったものだったが、現在では「PSEマーク」へと移行している。モバイルバッテリーに義務付けられているのは、この「PSEマーク」で、これはJISのように国が定める高い品質基準とは異なり、「最低限の安全性をメーカーが自己確認した」ことを示すマークであることに注意しよう